ジュリエッタが13歳の夏、マルコはアンナとジュリエッタをイタリア旅行に連れて行ってくれました。
ジュリエッタにとっては初めてのイタリア。
初めての海外旅行。
飛行機の中では マルコと花札をしながら過ごしました。
添乗員さんに「花札ですか?」と親しげに声を掛けてもらったのを覚えています。
飛行機の中で花札をする人はあまりいないのでしょう。
イタリアでは、父マルコが案内役です。
いろんな場所に連れて行ってくれました。
ツアーにも少し参加しました。
イタリアの鉄道を利用するときにも
マルコが全て手配してくれていました。
ご存知ですか。イタリアの鉄道で働いている男性は
薄いブルーのシャツにグレーのパンツを履いています。
夏限定の制服のようなものだと思いますが。
イタリアが好きで好きで、イタリア語を勉強していて、
とにかくイタリア語を話して現地のイタリア人と交流したいマルコ。
一体、どんな手段に出たと思いますか。
薄いブルーのシャツとグレーのパンツを履いてきたのです。
最初は、なんで鉄道員さんと似たような服装をしてきたのか13歳のジュリエッタにはわかりませんでした。
ところが、父マルコのところにイタリアの方々が話しかけてきたのです。
鉄道員と間違えて、質問をしに来たのです。
マルコは嬉しそうにイタリア語で応えていました。
計画通りだったのでしょう。
ああ、そういうことか、とジュリエッタは悟りました。
しかし、順風満帆かと思えた計画に、予想外の事が起こりました。
警備員に、職務質問されてしまいました。
マルコはちょっとびっくりした顔をしていましたが、
「服装が似ているのは、たまたまです。」と
イタリア語で流暢に答え、無事に難を逃れる事ができました。
あの時のマルコのちょっとびっくりした顔は
なぜだか今でも鮮明に覚えています。
イタリア語を話せるようになることに対して貪欲なマルコ。
その貪欲さがマルコの魅力でもあります。
イタリア語を勉強しつつ、ほとんど全ての映画を鑑賞し、
歴史や文学の本を嗜み、たまには漫画も読んで、
クラシックや様々なジャンルの音楽に親しみ、
そして仕事をする。
一体、マルコの1日は何時間あったのでしょうか。
24時間では無理でしょう。
1日を40時間分ぐらい充実させていたのですね。
その貪欲さ、受け継ぎたかったなー。