1964 監督デ・シーカ 出演 マストロヤンニ ローレン とくれば、人情悲喜劇と決まっていますね。同じコンビの傑作『昨日・今日・明日』1963の続編とみてもOKです。最後の土壇場でソフィア・ローレンの見せる大芝居は必見、この映画をご覧になれば日本題名が絶妙であることに気が付かれるでしょう。脚本のレナート・カステラーニはカンヌ映画祭グランプリ『二ペンスの希望』1951の監督でもあった人。この傑作映画は見逃せません。
ミケランジェロ・アントニオーニ監督が描きたかったのは何か、彼の作品は物の影や光線・色彩に何かしら意図があります。そこが魅力です。ラヴェンナの街を赤い色を基調としたカラーで映し出す。モニカ・ビッティが情緒不安定気味の主人公を演じる。『太陽はひとりぼっち』と時もそんな役柄だったけどアンニュイな顔立ち?の彼女にはぴったしです。モニカの動揺の原因が分かってくるにつれ赤っぽい色調が彼女の情緒とかかわっているのだ。アントニオーニは芸術家。C
監督 マルコ・ベロッキオ 20世紀末ころから、かつて名を出すことさえはばかれていたファシズムの生みの親たち、ヒトラーやムッソリーニが映画に登場するようになったのは時代の流れか。ムッソリーニと逃避行をともにして一緒に処刑された愛人ペタッチも一途な愛を捧げた女性だったに違いない。しかしこの映画の最初の愛人イーダは自分を抹消しようとする権力に力強く抵抗する。女優ジョヴァンナ・メッツォジョルノはアリダ=ヴァリの若いころとよく似ています。T
監督 マルコ&アントニオ・マネッティ兄弟
昔々「ナポリの饗宴」という素晴らしいミュージカルありましたね、ナポリ民謡一杯で満足度100% イタリアはオペラやカンツォーネの国なのにミュージカルがないのは何故?兄弟監督やってくれました。ミュージカル「ナポリの狂演」、演技が狂ってるわけではありません、美男美女は出てきませんが、かれらは過剰な演技をし、予想を裏切る場面で歌いはじめる、演出が狂ってる、と思わせる始まりかた。全体を通してのこのアバウトさは考えぬかれた結果でしょう。 T
監督ジーン・ネグレスコ 米映画
ローマとヴェネツィアのロケが素晴らしい。テルミニ駅、トレヴィの泉、コロッセオなど戦後10年の復興間もない風景が見られるだけでも大満足。現在のテルミニ駅ではイタリア人はごく少数だけどこの映画では一杯です。3組の恋の顛末がアカデミー音楽賞のテーマ曲にのせてトレヴィの泉を背景に描かれる。若きロッサノ・ブラッツィとハリウッド女優ジーン・ピータースのカップルの初々しさは必見。前年の『ローマの休日』の陰に隠れていますが、この作品も名作です。イタリアへ誘われます。T
監督リリアーナ・カヴァーニ 元ナチ親衛隊員が前歴を隠して働くホテルに、偶然かつて強制収容所にいたユダヤ人女性がやってくる。過去の2人の関係、そしてこれからはどうなっていく? 監督は英女優シャーロット・ランプリングから最高の演技を引き出した。元親衛隊役ダーク・ボガードはイギリスの名優。ヨーロッパの俳優さんに国境はありません。公開時、映画の日本語タイトルが話題になりましたが、ランプリングの心の動揺は「愛の嵐」でよかったと思います。現在でこそ多くの女性監督の顔ぶれがみられるますが、カヴァーニ監督は60年代から活躍、その牽引者となりました。この作品では女性の視点からナチズムの暴力を描いています。C
監督 ピエロ・パオロ・パゾリーニ 公開当時、名駅前大名古屋ビルジング近くにあったメトロ座で鑑賞しました。その時の天候、帰り道の情景も記憶にあるのはこの映画のせい。印象の強い映画は鑑賞時の空気感まで一緒に残ります。パゾリーニが75年謎の事件で亡くなるまで注目していました。ギリシア悲劇『オイディプス』を強烈な音と色彩で見せるだけでなく現代にタイムスリップさせる。母親役のシルヴァーナ・マンガーノは鬼気迫る美しさでした。C
プーリア州レッチェがエレガントな街として出てきますが、その郊外の風景も美しい。映画の中で素敵な曲が聞ける、イタリアンポップス界新人ニーナ・リッチの「50万粒の涙」、「ナポリの一夜」は名曲。同性愛者に対する意識や社会問題にからむ家族の在り方など、家族群像が織りなすドラマが今のイタリアを感じさせてくれます。いくつかあるエピソードも楽しく哀しい。俳優リッカルド・スカマルチョ、ニコール・グリマウド人気上昇中。マルコはCD購入しました。C
監督 ジッロ・ポンテコルボ ヴェネツィア映画祭グランプリ受賞 130年間、フランスの植民地支配が続いたアルジェリアにおける血みどろの抵抗運動を描いた。このドキュメンタリー映画かと見間違うほどの白黒画面のリアル感は本物のニュースを越えている。出演者の多くは現地の人たちでアルジェのカスバが主な舞台となり、フランス軍による残酷な拷問、アルジェリア人によるフランス人に対する暴力、どちらかに偏ることなく事実のみを伝える。授賞式会場からフランス人は席を立った。ポーランド映画「地下水道」と並ぶ名作である。C
監督 アンドレア・セグレ
イタリアは「われわれだって移民の国だった」と外国人受け入れ援助には寛大で、2018年時点で500万人、EUの中では際立って多い。しかし近年、外国人嫌悪が一般化しているのも事実。この映画の主役2人の中国は移民数第4位、旧ユーゴは18位
ヴェネト州の小都市キオッジャで2人の移民労働者の織成すドラマは其々の人生を俯瞰しながらクライマックスを迎える。どのシーンも絵になるカメラと静かな音楽がドラマをポエムに仕上げている。「長江哀歌」のチャオ・タオはこの映画でも素晴らしい。C
1928年北極探検に向った巨大飛行船イタリア号遭難事件 隊長のノビレ将軍は救援が来ると真っ先に帰還した。遺されたイタリア人隊員は行方不明 この隊長の行動やいかに 行方不明者捜索に探検家アムンゼンが向かって遭難者を収容。しかし今度はアムンゼン自身が遭難 この実話は国際的に報道された。 ノビレは後半生、世間からの批判と心の葛藤にうなされる。夢の中で死んだ隊員やアムンゼンと語り合う。この映画の主人公は北極の大氷原、この極寒の自然を前にしていかに人間は小さい存在か、素晴らしいカメラワークが見る者を圧倒する。C
極地の英雄アムンゼン役はショーン・コネリー。007のボンドから脱皮して重厚な演技を見せる。彼はこの作品でヒーローから
演技派になったと言われた。
北極ロケのエピソード:北極における約3カ月に渡る撮影は危険に充ちたものだった。白熊が撮影隊のいる船に徒党を組んで近づいてきた。猟銃にもサイレンにも驚かなかった。紅一点のクラウディア・カルディナーレは雪の中を転げまわってラブ・シーンを撮った。
北極の自然が風前の灯の21世紀、特撮ではなく、実写で北極の壮大な自然をフィルムに残したこの映画も映画遺産に加えて欲しかった。キネマ旬報「映画遺産200」編集委員の方々
監督ベルナルド・ベルトルッチ 原作ホルヘ・ルイス・ボルヘス 撮影ヴィットリオ・ストラーロ 出演ジュリオ・ブロージ アリダ・ヴァリ 撮影監督ヴィットリオ・ストラーロはアカデミー撮影賞3回、など数々の賞を受賞している。「光で書く」「色は象徴」と言うストラーロは照明に独特な色彩感覚を持っており、カンヌ映画祭の審査員でもある。ベルドリッチと最初にタッグを組んだ『革命前夜』ではパルマの町や周辺の風景を詩的に写しだしていました。今回は総天然色ということで、公開前から話題になっていました。主人公の青年がファシズム時代に暗殺されたといわれる父親の死の真相を探るためにポー川流域の小さな町を訪ねる。父の愛人役のアリダ・ヴァリが元気な姿をみせてくれます。サスペンスドラマは詩的な映像美によって、より濃厚になりました。T
監督ベルナルド・ベルトリッチ 原作アルベルト・モラヴィア 出演ジャン=ルイ・トランティニャン ドミニク・サンダ ステファニア・サンドレッリ 主人公はイタリア・ファシズム政府の秘密情報員マルチェロ、反ファシストの恩師の暗殺の命令が下った。マルチェロの回想シーンが物語の根底にあるもの(原作はモラヴィア『体制順応主義者』)を描く、あらゆる罪を犯してきた彼はその都度、体制に順応してきただけだ。彼を取り巻く女性たち、妻ステファニア・サンドレッリ、恩師の妻でマルチェロの愛人ドミニク・サンダは妖艶な女優さんたち、彼女たちは同性愛関係でもあり(出会ったばかりで)、異常な性倒錯者揃いである。ネオレアリズモの作家モラヴィアはイタリア人としては日本で一番出版数が多いけどこの作品は翻訳されていないようです。恩師とその妻が乗った車を追いかけて森に入っていくマルチェロ、衝撃的なラストが忘れられません。撮影のストラーロはこの作品でも独特な構図と色彩感覚で楽しませてくれました。マルチェロの回想は幻想だった? T
監督マウロ・ボロニーニ 出演オッタヴィア・ピッコロ マッシモ・ラニエリ
女工ベルタ(オッタヴィア・ピッコロ)は父親の反対を押し切ってパン焼き職人ビュビュと同棲するが、気性の荒いビュビュによって夜の街に立たされる。娼婦に身を落とした彼女の前にマッシモ・ラニエリ扮するやさしい青年が現れ、ふたりは愛しあうようになるがマッシモは彼女を悲惨な境遇から救い出すことができない。ヒロインがたどる不運な人生と努力してもままならない厳しい現実に負けてしまう若者、19世紀末のミラノの下町での非情な社会を情緒的に描いた作品です。『わが青春のフロレンス』と同じコンビの名作です。C
監督フェデリコ・フェリーニ 出演マルチェロ・マストロヤンニ アニタ・エグバーグ アヌーク・エーメ カンヌ国際映画祭パルムドール賞 キリスト像がヘルコプターでローマ上空を運ばれていくシーン、直後にゴシップ記者のマストロヤンニが乗っているヘリが続く・・この冒頭の場面だけでもこの映画を見てよかった。フェリーニならではの映像。三流記者は相棒のカメラマンのパパラッツォとゴシップネタを求めて夜のローマを動き回る。カタカナ用語辞典でパパラッチをひくと「有名人を追い回しゴシップ写真を撮ろうとするフリーランスのカメラマン、出典はフェリーニの映画『甘い生活』」とあります。映画の登場人物が現代マスコミ用語に残る、他に例を知りません。マストロヤンニ扮する記者は金髪でグラマーなハリウッド女優シルヴィア(アニタ・エクバーグ)を空港に出迎えサン・ピエトロ聖堂の屋上、カラカラ浴場跡のナイトクラブ、を連れ回しトレヴィの泉で水浴びまでする。一方で愛人のエンマ(マガリ・ノエル)が自殺未遂を起こす、富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)と情事を楽しむ、など、ゴシップ記者は快楽主義に溺れる日々をおくるが、どこか絶望感、寂寥感を漂わせる。映画の余韻は暗くはない。混沌とした、どこか不安が漂う現代を1960年にフェリーニは映像にしました。D
監督セルジオ・ゴッビ 原作ドミニク・ファーブル「美しい野獣」 音楽: ジョルジュ・ガルヴァランツ 出演ヘルムート・バーガー ヴィルナ・リージ シャルル・アズナヴール
原作の邦題にある野獣をエトランゼ(見知らぬ。不可解な人)として「美青年」俳優ヘルムート・バーガー(オーストリア)が演じた。ヴィルナ・リージ(イタリア)の美しさとシャンソン歌手アズナブール(フランス)の刑事役が話題になりました。70年代初期のヨーロッパの世相が見られるサスペンス風恋愛劇。ナタリーは真向いの八階のヴェランダから、女が飛び下りるのを目撃した。そして同じヴェランダに、夫らしい美しい男が、じっと彼女を見詰めていた。ナタリーの証言で、事件は自殺ということで落着したが、担当刑事のルロワは事件の裏に何かあるとふんで、執拗に捜査を続行した。ナタリーが部屋に帰ると受話器が鳴った。アランからだった。妻が自殺したというのに平然と自分を誘う、金持で美しいアランの、その悲しげな横顔に魅入られたナタリーはアランに惹かれ、まもなく結婚した。しかし予想された新婚生活はアランの不可解な行動によって忽ち崩れていく。刑事は彼女をアランの緻密な罠から救おうと、彼の出生の秘密を明かした。しかし、破滅に向かう二人を止めることはできなかった。T
監督ジュリアーノ・モンタルド 音楽エンニオ・モリコーネ 出演はジョン・カサヴェテス、ブリット・エクランド、ピーター・フォーク、ジーナ・ローランズ 、フロリンダ・ボルカン
ジョン・カサヴェテスはこの映画に出演する10年前、監督第一作『アメリカの影』1959を撮った。イタリア・ネオレアリズム映画に影響されたことを自身の口で述べている。監督ジュリアーノ・モンタルドは緊迫感に満ちた名作『アルジェの戦い』で撮影を担当した。この2人がタッグを組み、刑事コロンボ役で煌めき始めたピーター・フォークが
黒幕を演じたギャング映画。出獄したばかりの伝説的なギャング:マッケイン(カサヴェテス)は組織に息子を殺された復習にカジノを襲い金を奪う、情婦ローズマリー(ジーナ・ローランズ)の犠牲を伴いながら最後まで銃撃戦が続く・・観客は最後までスクリーンから目が離せない。『007黄金銃を持つ男』でボンドガールとなった
ブリット・エクランドがマッケンナの逃避行に伴う。C
監督ジュゼッペ・トルナトーレ 監督エンニオ・モリコーネ 出演セルジオ・カステリット ティツィアーナ・ロダト
映画監督を名乗るジョーが、オーディションをするためにシチリアの田舎町にやってくる。カメラを構えた彼の前に浮き足立った人々が集まってくるが、彼は参加費をだまし取る詐欺師だった。
たった1500リラのオーディション代で、明日の夢が叶うというのだ。島の人々はスターを夢見て、こぞって集まってきた。ジョーが配った「風と共に去りぬ」の台詞が覚えられず家族の話をする兄弟,彼らの話はガリマルディからスペイン内乱まで含み、まさにシチリアの歴史や社会を万華鏡のように
見せてくれる。ジョーの被害者の中には修道院で生活する無垢なみなしごのベアータもいる。出所したジョーは自分を心から愛してくれていたベアータが精神病院に送られていたことを知って嘆く、この悲劇的ラストで観客は前半のよろこびを忘れる。度々挿入される愛欲シーンさえ無ければ、同監督のヒット作『ニューシネマ・パラダイス』に迫る興行成績を収めたにちがいない。ジョーとベアータの関係はフェリーニの名作『道』のザンパナとジェルソミーナそっくりです。ハッピーエンドにして夢を見させ続けてほしかった。T
監督ディンノチェンツォ兄弟 出演エリオ・ジェルマーノ バルバラ・キキャレッリ
ベルリン映画祭銀熊賞・脚本賞 2021年イタリア映画祭(東京)上映作品 上映中、眉をひそめっぱなし、直視に耐えない場面も散在する、しかしここまで徹底されると忘れ難いものになります。暴力的、反社会的な大人たちに囲まれた子供たちも憎悪・嫌悪感・絶望を押し込めて生きている。ラストの度を越えた惨状は悲劇というより喜劇に近い感覚を覚えます。不条理ドラマを追求した、この兄弟監督の次回作を期待します。少年デンニスは癇癪もちの父ブルーノのもと、ローマ郊外で暮らしているが、近くに住む妊婦ヴィルマを見るにつけそのグロテスク
な姿態に惹かれる。クラスメートのジェレミアの部屋から自家製爆弾が発見され、爆弾作りをほう助した罪で担任教師は解雇されるが、その報復に簡単に手に入る毒薬について生徒たちに教える。デンニスをはじめとする子供たち(ローマ市内に引っ越していたジェレミア以外)は服毒自殺、未来に絶望したヴィルマは生まれたばかりの赤子を溺死させた後、飛び降り自殺をする。T
監督マルコ・ベロッキオ 原作マッシモ・グラメリーニ 出演者ヴァレリオ・マスタンドレア ベレニス・ベジョ
大人になった主人公マッシモが幼き頃に亡くなった母を追憶する、確か邦画にも同様なテーマの映画がありました。1960-90年代のイタリアの世相をバックに、母と子の絆を軸としたある家族の物語が描かれる。1960年代のトリノ。少年マッシモとママはとても仲良しだった。家の中で、二人でロックンロールに合わせてダンスし、いっしょに白黒テレビで怖い映画を見る。でも母親はマッシモと乗ったバスの中で不安そうな表情を見せていた。ある朝、マッシモはドアの外の叫び声を聞いて目覚める。多くの人が家に集まっている。慌ただしく父がでかける。でもママはいない。1990年代、マッシモはその家に帰ってきた。腕利きのジャーナリストとして認められているが母の不可解な死が受け入れられないでいる。家を売ることに決め、立ち退きまでに父の遺品を整理しなくてはならない。その過程で偶然、母の死の真相を知ったマッシモは精神科医エリーザとの出会いによって次第に母への想いからとき離れていく。イタリア映画らしい家族への愛が濃厚なドラマでした。T
監督ステファノ・ソッリマ 出演ピエルフランチェスコ・ファビーノ、エリオ・ジェルマーノ、ジャン=ユーグ・アングラード
イタリア映画のアカデミー賞:ドナッテッロ賞で5部門ノミネート 登場人物がすべて悪党の重厚なドラマ、迫力ある音楽とアクションで楽しめます。
2011年11月12日にベルルスコーニ首相が退陣表明するまでの1週間を背景に、ローマの裏社会で繰り広げられる抗争を描いた。与党の大物議員フィリッポ・マルグラーディ、通称ピッポは、ローマ郊外の港町をラスベガスのようなカジノの街にする再開発法案の成立を目指していた。その背後ではサムライと呼ばれる伝説のマフィアが暗躍し、利権にありつこうとする者たちが蠢いていた。そんな中ピッポが起こしたある事件をきっかけに、政治家や犯罪組織、教会をも巻き込み、
利権に群がる悪党たちの血で血を洗う抗争がはじまる。監督のステファノ・ソッリマはこの後、ハリウッド映画『ボーダーライン』でキッレキレのアクション映画を撮った。T
監督ロベルト・ロッセリーニ 音楽レンツォ・ロッセリーニ 出演アンナ・マニャーニ フェデリコ・フェリーニ 女優アンナ・マニャーニの実力発揮、その演技力に啞然とさせられる。第一話「人間の声」は実力ある舞台女優たちが試金石としてきたジャン・コクトーのひとり芝居。もはや愛を取り戻せないと知りながらも男からの電話をひたすら待つ女。第二話「奇蹟」は無垢な農民の娘が崖の上で会った放浪者を聖人だと信じこみ、その子を妊娠してしまう。村人のそしりを受け、石もて追われながらも彼女は独力で子供を産む。ふたつのむくわれぬ愛のかたちを、アンナ・マニャー二がほとんど一人芝居で演じ切るマイオーリでの山岳ロケが素晴らしい。ロベルトに説得されたフェデリコは俳優として第二話の放浪者を演じた。髪を金髪に染めて出演、ご褒美にフィアットをいただいたとか・・・作品制作時、ロッセリーニ監督(当時38歳)はマニャーニ(当時40歳)と恋人関係だった。D
監督ルキノ・ヴィスコンティ 出演マルチェロ・マストロヤンニ アンナ・カリーナ フランスの作家カミュが『ペスト』の前に発表した不条理小説『異邦人』が原作。カミュは交通事故で亡くなりますが、生前、親交のあったヴィスコンティから映画化の許可を求められても絶対認めなかった。フランス植民地時代のアルジェで主人公ムルソーはアラヴ人を殺してしまうが、動機はただ太陽が眩しかったから。ヴィスコンティ監督は最初、ムルソー役はアラン・ドロンに決めていたらしいが結果的にマストロヤンニになったとか。ムルソーを裁く法廷場面で人の思考や行動の「不条理」さを描く。「文学でしか成しえないことを映像化するには無理があった」という批判もありましたが私はマストロヤンニの汗だくの演技で満足です。ただ二本立てで見た時の併映作品がシドニー・ルメット監督の米映画『質屋』(戦時中捕虜収容所で妻子を殺害された老人の心の葛藤を描く)だったため、消化しきれず見た後しばらく食欲不振が続きました。 C
監督ピエトロ・ジェルミ 出演マルチェロ・マストロヤンニ ステファニア・サンドレッリ
シチリア舞台の風刺喜劇 既婚の没落貴族フェルディナンド(マストロヤンニ)は若い従妹アンジェラ(サンドレッリ)と愛し合うようになり、長年連れ添った妻と離婚したくなった。しかしこの国では離婚は認められていない。妻の浮気を発見して殺害しても数年の服役ですむという封建的な慣習を利用する。妻が浮気するように仕向け予定通り妻が駆け落ちしてくれたので射殺、祝福されて従妹と結婚。このシリアスな話をドタバタ喜劇にしました。。封建的慣習が法律を越えて存在する、この怖い話をお笑いにして皮肉るところは、まさにイタリア映画的ブラックコメディ。T
監督ロベルト・ロッセリーニ 出演イングリッド・バーグマン ジョージ・サンダース
バーグマンの繊細に揺れ動く名演技が、夫婦の揺れ動く微妙な心理を浮き彫りにした作品です。社会問題を描くのではなく人間内部の感情をリアルに描いた点、ロッセリーニにとって新しい映画が誕生したかのようです。「ロッセリーニが実際の結婚生活が破局を迎えそうな時、願いも込めて赤裸々に語った物語」とも言われます。ベズビオ火山、ポンペイの遺跡、カプリ島、博物館など名所をめぐりながら2大名優バーグマン(キャサリン)とサンダース(アレックス)が過去を振り返る。アレックス『結婚して8年にもなるのに、僕ら二人とも相手のことは何もわかっていないようだ』1950年代の風光明媚さがすばらしく、特にの遺跡発掘現場のシーンはドキュメンタリー的に撮られており、キャサリンの不安が浮かび上がる場面と合わさり、秀逸なシーンとなっている。ロンドンに住む会社役員の夫婦はイタリアに車を走らせる。ナポリの別荘を処分するためだ。見かけは仲のいい夫婦だが他人同士も同然。冷え切って夫婦仲は悪化の一途をたどり、離婚に突き進もうとしている。ナポリ観光もちぐはぐな別行動だ。やがて素晴らしい風光や、古代美術や遺跡など歴史の重みに心を奪われた夫婦は、敬虔な祈りの行列の中に失った愛情の痛みを見いだす。D
監督マイケル・ラドフォード 出演マッシモ・トロイージ フィリップ・ノワレ マリア・グラツィア・クチノッタ
ナポリ沖合の小さな島、漁師の息子マリオは郵便配達助手として、島に住む詩人パブロ・ネルーダ(故あってイタリアに亡命し、世界中から手紙や小包が届く)への郵便物を配達する。実在したチリの詩人パブロ・ネルーダが祖国を追われた際にカプリ島へ身を寄せた史実をもとにしたアントニオ・スカルメタの小説を映画化。美しい砂浜でネルーダは自作の詩をマリオに聞かせ、詩の隠喩について語る。マリオはネルーダの温かい人柄に惹かれ、2人は友情を育んでいく。やがてマリオは島の食堂で働くベアトリーチェに恋をする。地中海の青い海原をバックにしたマリオ役のトロイージの素朴な演技と詩人役名優フィリップ・ノワレのやりとりを見るだけでも幸せです。
マッシモ・トロイージは本作の撮影を終えたわずか12時間後に心臓発作で41歳の若さで急死、これが遺作となった。アカデミー主演男優賞にノミネートされたのは故人になってからのことだった。C
監督フランチェスコ・ロージ 音楽ピエロ・ピッチオーニ 出演ソフィア・ローレン オマー・シャリフ ドロレス・デル・リオ 若くて、ハンサムなラモン王子(O・シャリフ)は乗馬の途中で馬にふりおとされ、馬はそのまま姿を消してしまった。帰り道、王子は自分を振りおとした馬を発見したが、近くで野良仕事をしていたイザベラ(S・ローレン)という女が、自分の馬だというので二人は喧嘩となってしまった。その元気溌剌のイザベラを王子はすっかり気に入ってしまった。だが、イザベラは、このごう慢な男をからかってやろうと考え、村人をあつめ王子を穴の中にとじこめてしまった。村人たちが引きあげてから、王子は穴の中から抜け出し、城に帰ったが、イザベラのことが忘れられず・・・。森の魔女、花嫁選びの皿洗いコンテストなどが登場する、シンデレラ物語を『シシリーの黒い霧』の社会派監督フランチェスコ・ロージがつくった楽しめるメルヘンです。T
監督・原案シドニー・シビリア 音楽アンドレア・ファッリ 出演エドアルド・レオ(ピエトロ) - 神経生物学者。グループのリーダー。
ヴァレリア・ソラリーノ(ジュリア)- ピエトロの同棲中の恋人。薬物依存者を世話しているソーシャルワーカー。
ステファノ・フレージ(アルベルト) - 計算化学者。ピエトロの右腕。中華料理屋の皿洗い。『黄金の七人』から始まる犯罪コメディ映画の系譜はイタリア映画固有のジャンルとして連綿と続いています。 高学歴ワーキングプアの学者たちが、合法ドラッグでひと儲けしようとする姿を描いている2017年に公開された続編2部作『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』『いつだってやめられる 闘う名誉教授たち』を合わせて鑑賞したい。笑いが散りこめられていて心地よい。T
伊・ルーマニア・英合作 監督ウベルト・パゾリーニ
出演ジェームズ・ノートン ダニエル・ラモント アイリーン・オヒギンズ
パゾリーニ監督の前作『おみおくりの作法』(日常生活の中で死と生を見つめる)は世界中の映画祭で絶賛された この作品もテーマは同じながら素晴らしい子役を得て、名作映画揃いの父と息子の物語に新たな傑作が加わった。窓拭き清掃員として働く33歳のジョンは若くして不治の病を患い余命宣告を受けた。自分亡き後、息子マイケルが一緒に暮らす“新しい家族”を探し求める。理想の家族を求め、何組もの“家族候補”と面会をするが、中々決断することができない。新米ソーシャルワーカーが共に困り果てるカフェのシーンが素晴らしい。清掃する窓を介しての人々との出会いはジョンに様々な思いをもたらす。北アイルランド、ベルファストの冷たく透明感のある街並みがジョンの心情を映し出す。マイケルのセリフは少ないものの、目で演技する多くのシーンは涙をさそう。オーディション会場での多くの候補者の中からダニエル・ラモントを見出した監督に拍手をおくりたい。ジョンが”家族”を決め、息子への手紙を収めた箱を準備するラストで観客は涙する。人生の節目で父の手紙を受け取り、父の愛をいつまでも感じ続けることのできるマイケルは幸せものだ。 T
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 出演カルロ・バッティスティ マリア・ピア・カジリオ 小犬フライク
年金生活者ウンベルトは子犬のフライクと下宿暮らし。家賃を払えず立ち退きを迫られる中、
昔の同僚や上役に会うが冷たくあしらわれ、物乞いをしようとするがプライドによってか、どうしてもうまくできない。30年間、公務員としてまじめに勤め終えたウンベルトは低い年金額によって追い詰められていく。下宿のメイドの少女のやさしさと子犬のフライクに救われるが、ついには自殺を決意。子犬のもらい手を探しても見つからず、一緒に列車に飛び込む寸前、子犬のフライクは悲鳴をあげ、ウンベルトから逃げ出す・・・犬の演技力に感動!『自転車泥棒』1948に続いてデ・シーカはネオレアリズモの傑作を残してくれました。生活困窮者に冷たい不条理な社会にあえぐウンベルト、彼を演じたのは俳優ではなく大学教授だったとのこと、格調高く演じた分、逆に哀れを誘いました。年金生活者の困窮は70年前のイタリアの話ではなく21世紀日本の話になるかもしれません。T
ジュゼッペ・トルナトーレ監督 音楽エンニオ・モリコーネ 出演ティム・ロス プルイット・テイラー・ビンス メラニー・ティエリー ビル・ナンビル・ナン
船上で生まれ育ち一度も船を降りることがなかったピアニストの生涯を描いたドラマ。
1900年。豪華客船ヴァージニアン号の機関士ダニーは、ダンスホールのピアノの上に置き去りにされた赤ん坊を見つけ、その子に「ナインティーン・ハンドレッド」と名付けて育て始める。船上で生まれ育ったナインティーン・ハンドレッド。ある晩、乗客たちは世にも美しいピアノの旋律を耳にする。ダンスホールのピアノに座って弾いていたのは、ナインティーン・ハンドレッドだった。随所で聴けるピアノの旋律が素晴らしい。噂を聞いて乗り込んできた名ピアニストとの対決、船上で出会った美少女に惹かれるようにいっとき船を降りたナインティーン・ハンドレッド、トランペット奏者マックス(この映画の語り手でもある)との友情、船の解体爆破の前に二人が交わす会話・・そして衝撃的なラスト。モリコーネのメロディ(1900)がノスタルジックなストーリーを盛り上げる。トルナトーレ監督最高のエンターテインメント映画になりました。C
監督セルジオ・レオーネ 出演チャールズ・ブロンソン ヘンりー・フォンダ クラウディア・カルディナーレ マカロニ・ウエスタンの創始者が本場ハリウッドで本格西部劇を作った。「フラッグストーンのセットだけでも『荒野の用心棒』1964の全予算と同じくらいかかっている」と報じられた。冒頭、ウッディ・ストロードとジャック・イーラムが列車を待っていて、ブロンソンと銃撃戦が始まる、フレッド・ジンネマン『真昼の決闘』1952が頭をよぎる。自分の兄を殺したサディストを追い詰める名無しのハーモニカ役がチャールズ・ブロンソン、無表情な殺し屋フランクはヘンリー・フォンダ、夫を殺された元娼婦役はクラウディア・カルディナーレが演じた。ブルドーザーで土地を切り開き立ち退こうとしない住民を無法者を雇って追い出す鉄道王をあぶり出すドラマが主軸。イタリアからハリウッドにやってきたレオーネが西部劇の神様ジョン・フォード一家のヘンリー・フォンダを迎えてつくった、正真正銘の西部劇です。レオーネ監督の夢が素晴らしいかたちで叶いました。ワイドスクリーン一杯に人物のアップを長々と見せて迫力を盛り上げる、まさに、レオーネスタイルです。C
監督:エマヌエーレ・クリアレーゼ 出演フィリッポ・プチッロ ドナテッラ・フィノッキアーロ ミンモ・クテッキオ シチリアから遠く離れたリノーサ島に暮らす20歳のフィリポは、代々漁師をやってきたプチッロ家の一人息子。父親を海で亡くし、今は祖父エルネストと共に海に出て生活を支えている。衰退の一途を辿る漁業から観光業に転じた叔父のニーノはエルネストに引退を促していた。フィリッポの母ジュリエッタは、息子を連れて島を離れ、ふたりで人生をやり直したい、自分も新しい出会いを、と考えている。やがて夏になり、島は観光客で溢れ活気づく。一家は家を改装し観光客にレンタル、自分たちはガレージで生活することになった。貸し出す客はマウラ、ステファノ、マルコに決まり、同世代の3人との交流にフィリッポも浮き足立つ。ある日、いつものように漁に出たエルネストとフィリッポは、アフリカからボートに乗ってやってきた数人の難民を助け、その中にいた妊娠中の女性を匿う。イタリアの小島にやって来るアフリカからの不法移民たちの姿を通じて、地球規模の問題を考えさせられる。
ヴェネチア映画祭審査員特別賞、アカデミー外国映画賞イタリア代表 T
監督・脚本ジャンフランコ・ロージ 出演サムエレ・プチッロ ピエトロ・バルトロ ジュゼッペ・フラガパーネ
映画の舞台ランペドゥーサ島はイタリア領最南端の島。シチリア島から南西へ約220km、チュニジアの海岸から東へ113kmに位置。映画冒頭でテロップが流れる「この20年間で島にやって来た難民40万人、溺死者1万5千人」 12歳の少年サムエレは、友だちと手作りのパチンコで遊び、島の人々はどこにでもある毎日を生きている。しかし、この島には彼が知らないもうひとつの顔がある。アフリカや中東から命がけで地中海を渡り、ヨーロッパを目指す多くの難民・移民の玄関口なのだ。島には巨大な無線施設が建ち、港には数多くの救助艇が停泊している。島でたったひとりの医師が島の人たちを診察する傍ら、多くの難民たちの検診や死にも立ち会う。彼は言う「こうした人々を救うのは、すべての人間の務めだ。」
エリトリア出身のロージ監督は難民たちの涙ながらの叫びでアフリカの今を映した。ベルリン国際映画祭金熊賞 審査員長のメリル・ストリープは「現代を生きる私たちに必要な映画。この映画が世界中で公開されるためならどんなことでもする」と本作を讃えた。T
監督マイケル・ラドフォード 出演アル・パチーノ ジェレミー・アイアンズ ジョセフ・ファインズ
ヴェネツィアを舞台とする映画は『旅情』から『ミニミニ大作戦』まで数え切れない、イタリア都市の中でローマに次いで多い。壮大な歴史と特異な地形はドラマを盛り上げる。この作品はシェイクスピアの戯曲を基にしているとはいえ、16世紀のヴェネツィアの風景を切り取って見せる歴史絵巻でもある。『イル・ポスティーノ』で一躍、世界に知られた英国人マイケル・ラドフォードはイタリアの風土を巧みに取り入れ、詩情あふれるドラマを創り出す。16世紀、ヨーロッパの貿易の中枢として栄えたこの運河の街で、ゲットーの中に隔離される生活をおくっていたユダヤ人の中に金貸し業シャイロック(アル・パチーノ)がいた。ゲットーの外ではユダヤ人を示す赤い帽子をかぶらなくてはならない。シャイロックはある日宿敵の貿易商アントーニオ(ジェレミー・アイアンズ)に借金を申し込まれる。原因を作ったのは、放蕩生活で財産を使い果たしたアントーニオの親友バッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)だった。シャイロックは、3000ダカットもの大金を無利子で貸すことを承諾。ただし、それには条件があった。「3ヵ月の期限内に借金が返せなかったら、アントーニオの肉1ポンドを引き替えにもらう」というもの・・・3人の演技派男優の中、アル・パチーノの軽妙かつ重厚な演技はやはり特別でした。
監督ピエトロ・ジェルミ 脚本フェデリコ・フェリーニ 出演ラフ・ヴァローネ エレーナ・ヴァルツィ ベルリン国際映画祭銀熊賞 シチリアの鉱山閉鎖で失職した坑夫たち、「フランスには働き口がある。国境を越える費用を払えば移住の手助けをする。」という偽ブローカーのいう事を信じ、切羽詰まった村人たちは家財道具を売り払って費用を支払った。サロ(ラフ・ヴァローネ)をリーダーとする子供をふくむ約20名は島を出てナポリからローマへと北上するが、そこで偽ブローカーはかれらの金とともに姿を消してしまった。何人かの脱落者を出しつつ彼らは北上していく、決してあきらめない。地主から仕事をもらうこともあったが地元の農民から「スト破り」と、抗議され再び旅に出る。農村に組合運動が広がっていた。雪に埋もれながら仏伊国境に到達するが警備隊に発見されてしまう。粋な計らいが子供を抱いて歩いてきたサロたちに新たな希望を抱かせる。原題の「希望の歩み」が暗示しているラストが心地良い。D
監督ガブリエレ・サルヴァトレス 音楽ジャンカルロ・ビガッツィ 出演ヴァンナ・バルバ、クラウディオ・ビガリ、ディエゴ・アバタントゥオーノ
91年度アカデミー外国語映画賞受賞 ギリシャの孤島に派遣された8人のイタリア兵が送る日常を描いたドラマ。美しい島の風景が素晴らしい。第二次大戦が勃発した年、エーゲ海の小島に8人のイタリア兵が上陸した。彼らの任務は島を敵から守り、報告することであった。しかし彼らの戦艦が爆撃に遭い本国と連絡不可能となった。彼らは島の住人とともに平穏な日々を過ごす。ファリーナは娼婦のヴァシリサ(ヴァンナ・バルバ)を愛し結婚をする。そして他の者たちもそれぞれ夢のような生活を送っていた。しかし、ある日島にイギリス軍の船がやってくる。それは8人がこの島を離れ、国に帰ることを意味してた。
青い海、赤い夕暮れ、白い家、そして後半の急展開するドラマ、目にやさしく心に残る映画でした。T
監督ジュゼッペ・デ・サンティス 音楽ゴッフレード・ペトラッシ 出演ラフ・ヴァローネ ルチア・ボゼー フォルコ・ルリ 中部イタリアの丘陵地帯チョチャリア(ラツィオ州南部)。復員兵フランチェスコ(ラフ・ヴァローネ)は応召前彼の所有だった羊の群は村のボス、ボンフィリオ(フォルコ・ルリ)にすべて奪われていた。村人達はボンフィリオの威勢をおそれてフランチェスコのために有利な証言も出来ず、しかも彼の昔の恋人ルチア(ルチア・ボゼー)もまた貧困の故、父母の言うがままボンフィリオの婚約者にさせられていた。フランチェスコは羊を奪い返そうと
するも逮捕、裁判にかけられ4年の収監がきまった。ボンフィリオはこの地一帯の牧場を次々と手に入れ、更にルチアとの結婚を強行しようとしたが脱獄したフランチェスコに追い詰められる。踊りを披露するルチア・ボゼーの可憐さとフォルコ・ルリの悪役ぶりが素晴らしい。農民たちの合唱、ダンスのシーンが配置されエンターテインメントの要素もたっぷり、まさに同監督『にがい米』の山岳版。貧しい者たちの連帯が悪に打ち勝つ。D
監督パオロ・ジェノベーゼ 出演ジュゼッペ・バッティストン ヴァレリオ・マスタンドレア アルバ・ロルヴァケル イタリアの映画賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最優秀作品賞と最優秀脚本賞に輝いたコメディー。
ある満月の晩、エヴァとロッコ夫妻が友人たちを夕食に招待した。幼馴染の2組の夫婦と1人の男、全員7人。美味しい食事にお酒も入り話が弾む中、心理カウンセラーのエヴァが提案する。「私たち本当に親友かしら、お互いが信用できるなら携帯電話見せ合わない?」「メールが届いたら全員の目の前で開くこと」「かかってきた電話にはスピーカーに切り替えて話すこと」というルールを設定してを開始する。ゲームが進むにつれ、夫婦や友人間にさまざまな疑惑が巻き起こっていく。終盤に近づくほど重苦しい雰囲気になっていくが意外にも清々しいラストは、さすがイタリア映画!と思わせてくれました。C
監督レオナルド・ピエラッチョーニ 出演レオナルド・ピエラッチョーニ ロレーナ・フォルテーザ
トスカーナ地方の田舎町で会計士として働いているレバンテ(レオナルド・ピエラッチョーニ)。素人画家の弟、リーベロ(マッシモ・チェッケリーニ)、レズビアンの妹、セルバジャ(バルバラ・エンリーキ)と父親と共に町外れの農場で暮らしている。ある日、スインからやってきたフラメンコ・ダンサーの団体が道に迷ってレバンテの家へやってきた。マネージャーに懇願され、一家は彼女たちに一夜の宿を提供することに。ダンサーの中のひとり、カテリーナ(ロレーナ・フォルテーザ)に一目惚れしたレバンテだったが、手違いのため町でのフラメンコ公演は中止になり、ダンサーたちは早々と町を出て行ってしまう。ひとり、トスカーナで悩むレバンテ。どうしてもカテリーナを忘れられないと悟ったレバンテは、カテリーナを取り戻しにスペインに旅立つのだった。
ひまわりの咲く田舎をバックにフラメンコが踊られる、のどかな佇まいと陽気な村人たち、恋人たちの行方はどうあろうと楽しめる映画でした。T
監督クラウディオ・ロッシ・マッシミ 出演レモ・ジローネ コッラード・フォルトゥーナ ピーノ・カラブレーゼ モーニ・オヴァディア
「イタリアの最も美しい村」のひとつに数えられるアブルッツォ州チビテッラ・デル・トロントを舞台に、年齢や国籍の違いを超え、本を通して老人と少年が交流する姿を描いた。 風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上にある、小さな古書店。店主のリベロはある日、店の外で本を眺めていた移民の少年エシエン(生まれはブルキナファソ)に声を掛ける。好奇心旺盛なエシエンを気に入ったリベロは「ミッキーマウス」から始まって「ドン・キホーテ」に至るまで次々と店の本を貸し与える。2人は本の感想を語り合ううちに、年齢や国籍を超えた友情を築いていく。サイドストーリーとして古書店を訪れる人々、隣のカフェで働く青年、彼が想いをよせる家政婦、初版本コレクター、ラテン語の辞書を売りに来る教授、ゴミ回収の折りに見つけた女性の日記帳をリベロに渡した移民労働者、発禁本を探す神父、など個性豊かな客人とリベロが交わす会話が楽しい。死期が迫ったリベロはエシエンにある本を贈る、人種差別に立ち向かっていく勇気が得られることを願って。映画の原題は”幸せへの権利”です。あらためて読書の素晴らしさを味わうことが出来ました。C
監督 ピエル・パオロ・パゾリーニ 出演マリア・カラス
エウリピデスのギリシア悲劇「メディア」を映画化したもの。不実の夫に復習するため最愛の息子を殺す薄幸の女メディアの物語。パゾリーニ監督は音楽も担当してラマ僧のラッパ音や日本の長唄などを使って劇的な効果をあげた。ギリシア王家出身の青年イアーソン(ジュゼッペ・ジェンティーレ)は父の王位を奪った叔父の宮廷にいき王位の継承を迫った。叔父は未開国コルキスの黄金の羊皮を持参すれば申し出を受け入れると言った。コルキスに向かったイアーソンはそこでメディア(マリア・カラス)という巫女に出会った。イアーソンは王位を得て、メディアと甘い生活を送り2人の子をもうけた。数年後、彼らはコリントスにやって来た。この地でイアーソンは王クレオン(マッシモ・ジロッティ)の寵愛を得て、彼の娘グラウケーと婚約した。彼の裏切りを知ったメディアはグラウケーを呪い殺し、2人の子供たちを殺し、自ら炎の中で焼け死んだ。1965年『トスカ』で事実上引退していたオペラ歌手カラスが凄味のあるメディアを演じた。T
監督 マルコ・ヴィカリオ 出演 フィリップ・ルロワ ロッサナ・ポデスタ ガストーネ・モスキン
ジュネーヴのスイス銀行大金庫の奥に眠る数百億の金塊を7人組のドロボーがこっそり頂戴しようと計画。6人は道路工事人に変装、銀行前の大通りに穴をあけて地下へもぐりこむ。一方首領は情婦と銀行の真向いのホテルの一室に陣取り地下の仲間と無線連絡。地下の6人は地下坑道から大金庫の床にドリルで穴をあけ、くずれ落ちる金塊を組み立て式ベルトコンベアにのせて路上のトラックへ流し込む。こうして金塊をごっそりかっぱらうが、首領が独り占めを企てたことから追いつ追われつのアクションが展開、結局、金塊はパーになってしまう。スリル、サスペンス、ユーモアが交錯した奇想天外なおもしろさは抜群。監督マルコは妻のロッサナ・ポデスタの映画界カムバックに大成功、『ユリシーズ』1953,『トロイのヘレン』1955などの神話的美女だけという印象だったポデスタがイメージチェンジ、これからの活躍が期待されました。続・黄金の七人レインボー作戦1966、新・黄金の七人=7×7 1968が作られた。C
監督ウンベルト・パゾリーニ 出演エディ・マーサン ジョアンヌ・フロガット カレン・ドラリー
人を弔う事とは?世界に共通するテーマをていねいに描いた。ロンドン南部、ケニントン地区の民生係44歳のジョン・メイの仕事は、孤独死した人の葬儀を執り行うことである。几帳面な彼は死者の家族を見つける努力を怠らず、その人のために葬礼の音楽を選び、弔辞を書く。身寄りなく亡くなった人を見送る仕事、事務的に処理することなく、持ち前の几帳面さで誠意をもってこなす。しかし、仕事に時間をかけすぎるという理由で解雇を言い渡される。自分のすぐ近くに住むビリー・ストークが最後の案件となる。ビリーの部屋にあった古いアルバムで笑顔の少女の写真を見つけた彼は、国中を回り、ビリーの娘ケリーを見つけ出す。彼女との出会いでジョン・メイに初めての感情が芽生え、ロマンスに発展すると思われた直後、悲痛な結末を迎える。しかし、エンディングの映像によってジョン・メイの行動が報われ、観客も救われる。 T