監督パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
ノーベル賞作家ルイジ・ピランデッロの短編集から6つのエピソードを「カラス」が繋ぐストーリー展開。どの話もシチリアの原風景をバックに鮮烈に描かれ、187分という長尺を感じさせない。「もうひとりの息子」のエピソードはシチリアの歴史と現代を結び、忘れがたい。この映画のシチリア独特の美しさは他では見ることができない。タヴィアーニ兄弟は先輩の監督たちの手腕を受け継いでいる。ヴィスコンティの『揺れる大地』と、この作品はシチリア映画の代表作となるに違いない。T
監督フェデリコ・フェリーニ
アカデミー賞外国映画賞受賞純真でお人よしの娼婦カビリアは男にだまされ続けるが、ついに理想の男性に出会うことができた。結婚詐欺師にひっかかるラストまで社会の底辺をドキュメンタリータッチで鮮烈に見せてくれる。カビリア役のジュリエッタ・マシーナは同監督の『道』と同様、その天真爛漫な演技は天才的。ニーノ・ロータの音楽がローマ郊外街道筋の白黒映像を引き立てる。T
監督ベルナルド・ベルトリッチ 出演 フランチェスコ・バリッリ アドリアーナ・アスティベルトリッチ監督1941年生まれなので23歳で作った映画です。自らの故郷パルマを高度成長期の活気ある市井に加えて郊外の失われていく自然も巧みにカメラに収めました。都市の俯瞰映像や人物のクローズアップによって観客は白黒画面に集中させられる。60年代、激動の時代 主人公の青年ファブリツィオは学生時代の教師の影響で、左翼思想に傾いている。ブルジョワの家庭に居ることに後ろめたさを感じながらもそこから出ることはない。共産党大会に参加し議論はするがそこに留まりラストで同じ階級の娘と結婚して祝福を受ける。これが革命前夜なのか、劇中映画好きの友人がヌーヴェルヴァーグについて熱く語り、ゴダールやアンナ・カリーナを絶賛しロッセリーニを神のように称える場面がある、新しい映画手法にベルトリッチはこれから自分も追随していくのだという意思表示こそ革命前夜なのか、ご覧になった方の感想が聞きたいところです。いずれにしろ23歳にしてすでにこの作品を作ったベルトリッチには拍手を送るのみです。T
監督マリオ・ソルダーティ 原作アルベルト・モラヴィア 出演ソフィア・ローレン リク・バッタリア
ポー川河口の漁村で働くニヴェスはトロール船を持ち、ときには密漁もするタフな二枚目ジーノに誘われ体を与えるが、女たらしのジーノはあっさり彼女を捨てる。やがてニヴェスが妊娠を知った頃、ジーノを密輸業者として逮捕にきた警官を傷つけ5年の刑を受ける。2年後ジーノは脱獄するが、おりからニヴェスとの間にできた子が溺死するのを目撃、ジーノは自ら縛に就きニヴェスとの愛に目覚める。涙にくれながらマンボを踊るソフィア・ローレンが強烈で、いよいよ大女優の登場となりました。T
監督 マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ 出演 ルイジ・ロ・カーショ アレッシオ・ボーニ アドリアーナ・アスティ ソニア・ベルガマスコ
『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』のジョルダーナ監督が1960年代から現代までのイタリアの一家族を描いた大河ドラマ。6時間を越す長編だが、家族のそれぞれの歩む道がイタリアの社会史と絡んでドラマチックに描かれる。ニコラと一歳年下のマッテーオは兄弟で社会への違和感を共有していた。ニコラは精神科医になることを決め、マッテーオは大学を中退して軍隊にはいる。絶縁状態だった二人は1966年に大洪水が襲ったフィレンツェで再会する。トリノの学生運動、赤い旅団のテロなどを背景に激動の70年代を振り返る。
ニコラ役のルイジ・ロ・カーショが渾身の演技。母親役のアドリアーナ・アスティ(『革命前夜』)も懐かしい。
2003年カンヌ映画祭批評家週間最優秀賞 D
監督ルカ・ミニエロ 出演者マッシモ・ポポリツィオ フランク・マターノ ステファニア・ロッカ 1945年に死んだはずの独裁者ムッソリーニ(マッシモ・ポポリツィオ)が現代のローマによみがえり、偶然彼を撮影した売れない映像作家カナレッティ(フランク・マターノ)はドキュメンタリー映画の制作を考える。二人でイタリア全土を巡る撮影旅行に出ると、彼をそっくりさんだと思った人々はスマートフォンを向けるなど、いつしかムッソリーニはインターネットやテレビを通じて人気者になっていく。
映画化もされたベストセラー小説「帰ってきたヒトラー」を、舞台をドイツからイタリアに置き換えて映画化した。独裁者ムッソリーニが現代に復活し、再び国の権力者になろうとするさまを描いた風刺コメディー。実物より男前の役者が颯爽と演じるが、100年前とは言え、20年代のファシスト行動隊による暴力の歴史を思えばおいそれとは笑えません。C
出演バート・ランカスター シルヴァーノ・マンガーノ ヘルムート・バーガー バート・ランカスターは米俳優で一番たくさんイタリア映画に出演しています。ここでは趣味に生きる元教授役ですが、その風貌がヴィスコンティ作品『山猫』1965のシチリア貴族と瓜二つ。『エルマー・ガントリー 見せられた男』でアカデミー主演男優賞を得てから名演続きです。ローマのアパートで美術品に囲まれて静かな余生をおくっていたところ、上階に侯爵夫人を名乗る女性が若い愛人、破天荒な娘とその恋人がやってきて、ランカスターの平和な日常は悪夢にかわるが、彼らと関わるうちに、自分自身の家族への想いが蘇る、母や妻の面影がよぎるようになる。映画を見るものの世代によっては涙をこらえることができない作品です。C
1監督ヴァレリオ=ズルリーニ 主演マルチェロ=マストロヤンニ ジャック=ペラン 異なる環境で育った兄弟が久しぶりに再会する。兄マストロヤンニは祖母に育てられ貧困を生き抜いてきた、弟ジャック=ペランは貴族の家に預けられ恵まれた環境に育った。深い兄弟愛が伺えるものの弟の生き方に兄はいつも辛く当たってしまい、心を通じ合えないまま悲しいラストをむかえる。二人の名演もあって、心にしみるドラマになりました。T
監督ジュゼッペ・トルナトーレ 音楽エンニオ・モリコーネ 出演ジェフリー・ラッシュ シルヴィア・フークス ドナルド・サザーランド
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。ヴァージルが最後の競売の場として向かったロンドンから帰ってくると、コレクションしていた絵画と共にクレアまでもがいなくなっていた。ヴァージルは歳の差を越えた愛を信じたいが・・謎を残したままミステリーは終わる、しかし味わい深いラストが用意されている。T
監督エリオ・ペトリ 原作ロバート・シェクリー 出演マルチェロ・マストロヤンニ アーシュラ・アンドレス エルザ・マルティネリ
21世紀の未来社会では殺人競技がスポーツとして公認されている。人間の闘争本能を満足させるためで、世界戦争を未然に防ぐための安全弁なのだ。生きることに疲れ、”殺人”という個性的なスポーツに生きがいを見出す男をマストロヤンニが演じ、彼を付け狙う女の殺人者に007ボンドガール第1号アーシュラ・アンドレスとくれば艶笑喜劇としての楽しみも満載。後年、『悪い奴ほど手が白い』『殺人捜査』など数々の傑作を生みだしたエリオ・ペトリの第1作である。C
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 原作ジョルジョ・バッサーニ 小説「フィンツィ=コンティーニ家の庭」1962 出演ドミニク・サンダ リノ・カポリッチオ ヘルムート・バーガー
北イタリア、古都フェッラーラ、広大な敷地と屋敷を保有する裕福なユダヤ人姉弟(ミコル&アルベルト)と彼らの友達が織りなす青春の日々が描かれる。白いウェアを羽織り、街中を自転車で颯爽と走る、敷地内テニスコートでテニスに興じる若者たち。ミコルを幼い頃から愛し続けてきたユダヤ人青年ジョルジョの淡いロマンス。同時に、第二次大戦時イタリアに暮らすユダヤ人に対する迫害も厳しさを増してくる。ラジオニュースの独ソ戦報道が不穏な空気を醸し出す。映画後半は“ユダヤの悲劇”へなだれ込んでいく。青春時代を理不尽に奪われたユダヤの若者たちの哀しみと絶望・・・。抱腹絶倒の喜劇作家デ・シーカ監督は別人のように悲しみに満ちた戦争悲話も作ります。ミコル役ドミニク・サンダ、アルベルト役ヘルムート・バーガーの美しさが哀れさを増しました。T
第21回ベルリン国際映画祭金熊賞 第44回アカデミー賞外国語映画賞
監督ネロ・リージ 原作エディス・ブリュック『街へ行く』 出演ジェラルディン・チャップリン ニーノ・カステルヌオーボ フェデリーコ
ドイツ軍占領下のユーゴ、その片田舎に17歳の少女レンカと弟ミーシャが住んでいた。父はユダヤ人収容所に送られていたが、レンカは盲目の弟にだけは醜い現実を知らせまいと思う。ある雨の夜、脱走して帰ったきた。抱き合って喜び合ったのも束の間、父は屋根裏に隠れてゲシュタポの目をのがれるが、レンカの恋人の身代わりとなって射殺されてしまい、姉弟も強制収容所へ送られる。「どこへ行くの?」とたずねる弟。「町へ行って目の手術をするのよ」と答える姉。戦争のむごさを坦々と描かれていて、弟を想う姉のやさしさに涙が止まりません。T
監督エルマンノ・オルミ 19世紀末、北イタリアの農村、土地から住居・農具まですべて地主の所有物であった時代、小作人夫妻と息子の日々が延々と描かれる。記録映画
のようにリアルです。鳥の糞をトマトの肥料にする、トウモロコシの収穫、ガチョウや豚を料理する迫力ある場面など、出演している農民たちは俳優ではなく現地の人々だからこそ生まれた、労働と汗。ヴィスコンティ監督の傑作『揺れる大地』の出演者はみな現地シチリアの漁民だったことを思い出します。息子の木靴が割れたので木を切って新しい靴を作るが木一本とはいえ地主の所有物だったため厳しいラストをむかえるが小作人たちはただ溜息をつくばかり。カンヌ映画祭パルム・ドール賞受賞 T
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 主演ソフィア・ローレン マルチェロ・マストロヤンニ デ・シーカ監督は『バストで勝負』では、俳優としてローレン、マストロヤンニと共演し、二人に負けない喜劇的センスを発揮しました。今回は監督として自分の分まで二人に演じてもらいました、三話からなるオムニバスのドラマはどのエピソードも優劣つけがたく、「人情喜劇」というジャンルを映画に加えたくなります。第1話 妊娠中の女性は刑を免れる、という法律を利用して違法行為を働いたローレンは妊娠・出産をし続ける、が夫のマストロヤンニは疲れ果て、ついに妻は逮捕されてしまう。彼女を救い出そうと奮闘するお話、イタリアならではの艶笑喜劇。アカデミー外国語映画賞受賞 T
監督ピエロ・パオロ・パゾリーニ 出演エンリケ・イラソキ マルガリータ・カルーゾ
イエス・キリストの生涯を描いた作品です。同じテーマでハリウッドのリアリズム派の巨匠ジョージ・スティーヴンスはオールスター出演エキストラ千数百人の大作『偉大な生涯の物語』1965を作った。撮影はユタ州に大がかりなセットを作って準備に5年の歳月をかけました。シネラマ・総天然色。パゾリーニは南イタリア・マテーラで現地人を起用、モノクロで短時日、低予算で「マタイによる福音書」に忠実につくりました。キリスト教に関わることの少ない一般の日本人にとって、どちらがイエスの生涯をリアルに感じることができるでしょう、「奇跡の丘」は登場人物を美化することなく
イエスの時代、紀元前後のパレスチナにたしかに存在していたかのような普通の人々がマリアでありヨゼフ役を演じている。ドキュメンタリー映画のようなパゾリーニ作品は人間イエスを描くことに徹底しました。T
監督アレッサンドロ・ブラゼッティ 音楽アレッサンドロ・チコニーニ 出演ジーノ・チェルヴィ アドリアーナ・ベネッティ イタリア映画最古参のブラッゼッティのこの作品を海外の評論家たちは「イタリア映画に新風が吹いた」と讃えた。口やかましい妻に日夜悩まされている中年の菓子外交員パオロ(ジーノ・チェルヴィ)は、ある朝商売に出る汽車の中で美しい女性マリア(アドリアーナ・ベネデッティ)に出会った。マリアは、ひとりで都会生活を送るうち、恋人の子を宿したが、男には逃げられ、働くことも出来ず、今実家へ帰ろうとする所であった。この身上話をしながらマリアは、少しの間、夫のふりをして一緒に実家へ来てくれぬかと、パオロに頼む。迷ったパオロはマリアに同行し、マリアを勘当すると激怒した父親を静かになだめた。父の心も和み、パオロは気特よく自宅に帰ったが、そこでは、出かけた時と同じ妻の小言が、またもや彼に襲いかかって来るのだった。ジーノ・チェルビの演技、新進女優アドリアーナ・ベネデッティの可憐さが際立った人情喜劇。D
監督ダミアーノ・ダミアーニ 音楽カルロ・ルスティケリ 出演ヴァニ・ド・メグレ レジノルド・カーナン ケイ・ミアスマン
ナポリ湾の島を舞台にした16歳の少年アルトゥーロの物語。少年が英雄視しているドイツ人の父親ウィレムは島を出て行くと容易に戻らない。少年は父は冒険旅行をしていると一途に思い込んでいるが・・どうやら遊び人らしい。久しぶりに帰ってきた父は若い妻ヌンチアータを伴っていた。彼女が出産をする頃、ウィレムはまた旅に出るが少年は若い母親に激しい恋心を抱くがヌンチアータは母親としてその愛を受け止める。疲れ果てたウィレムが帰ってきたが、一緒の船に乗っていた囚人と同性愛の関係にあるらしい、アルトゥーロは父親の真実を知り、島を出て行く。今度は父親が息子の帰りを待つことになるらしい。義理の母への恋心、男二人の恋、これらはみな禁じられた恋なのか・・カルロ・ルスティケリの名曲が少年アルトゥーロのやり場のない切なさを奏でる。D
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 音楽レンツォ・ロッセリーニ 出演ヴィットリオ・デ・シーカ アドリアーナ・ベネッティ アンナ・マニャーニ
ネオレアリズモの先駆とされている作品 遊び人で借金まみれの小児科医ピエトロが孤児院の担当医を受け持つことになり、陽気な少女テレーザと出会う。少女の姓はヴェネルディ(金曜日)、親の名前がわからず、施設に預けられた曜日が「金曜日」だったから。だから、「Venerdì」と呼ばれることに彼女は敏感だ。そのテレーザを演じたアドリアーナ・ベネッティはこの映画がデビュー作、2年後の『雲の中の散歩』でスターに!!テレーザが戯曲の引用を駆使して医者の窮地を救う、豊かな暮らしの象徴としての白電話が小道具として頻繁に登場、ピエトロの召使いが電動ホウキの使い方がわからず奮闘する、ピエトロを篭絡させようとする(実は誠実な女性)ロレッタと名乗る踊り子を演じるアンナ・マニャーニの歌とダンスなど、戦時であることを忘れさせる楽しみに満ちている。孤児院(福祉)とプチブルが上手く結びつく人間喜劇は当時の政治体制が映画に期待したことかもしれません。
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 脚本チェザーレ・サヴァッティーニ 出演フランコ・インテルレンギ リナルド・スモルドーニ
パスクァーレとジュゼッペの2人の少年は仲良しで占領軍のいるローマで靴みがきをやりながら精一杯生きている。彼らの夢は貸馬屋の馬を買い取ることだった。お金を貯めようとジュゼッペの兄がやっている占領軍闇物資の横流しに協力するが共犯容疑で逮捕され少年拘置所へ送られる。取り調べが進む中、パスクァーレはジュゼッペが拷問されていると思い口を割ってしまうが、これがきっかけで2人の友情はこわれる。ジュゼッペは同房の少年と脱獄、パスクァーレは刑事たちと跡を追いジュゼッペを発見、誤って彼を殺してしまう。監督・脚本の2人はネオレアリズモの代名詞的存在、戦後の混乱期の子供たちの生きざまをリアルに情け容赦なく見つめている。拘置所内で孤立したパスクァーレに親しく接した少年の死に、所長が涙する場面に観客は救われる。D
監督ルチアーノ・サルチェ 音楽エンニオ・モリコーネ 出演ウーゴ・トニャッツィ カトリーヌ・スパーク
フランス人女優カトリーヌ・スパークが、小悪魔的魅力で中年男性を翻弄する美少女を演じたバカンス映画。60年代、高度成長期の北イタリアが舞台。ミラノに住む電気技師でプレイボーイの中年男性アントニオは、離れて暮らす息子のもとへ車で向かう途中、ガス欠に陥った若者たちのグループに遭遇し、自分のガソリンを提供するが、今度は・・・・。かつて日本にも既成の秩序を無視して、無軌道な行動をする若者たちを指す流行語”太陽族”がありました。アントニオ(ウーゴ・トニャッツィ)は彼らの行動に苛立ちを覚えながらも、その中にいた美しい少女フランチェスカに心を奪われ、彼らのバカンスに巻き込まれていく。アントニオは自分が浮いている事もわかっていながら若者たちと離れられない、とぼけたモノローグが白黒画面に良く似合う。いっとき、イタリア喜劇映画を代表したウーゴ・トニャッツィの出世作、日本での公開作品は少なく、貴重です。
監督ルキノ・ヴィスコンティ 出演クラウディア・カルディナーレ、ジャン・ソレル、マイケル・クレイグ、マリー・ベル
トロヤ戦争から帰ったギリシア軍総大将アガメムノンは妻クリュタイメストラとその愛人アイギストスによって殺される。父を殺されたエレクトラは弟オレステスとともに母とその愛人を殺害して復讐を遂げる(ギリシア神話)。この映画は神話の背景のトロヤ戦争を第2次大戦に設定、復讐の部分ではなく、姉サンドラ(エレクトラ)と弟ジャンニ(オレステス)の関係を中心に据えてミステリアスな物語が展開する。映画の舞台は中部イタリアのヴォルテーラ、エトルリア人が築いた古代都市が映画のムードを盛り上げる。エレクトラを演じたカルディナーレはまさに適役、母親役にフランスの名女優マリー・ベル(『舞踏会の手帳』1937)が出演。映画のタイトルは劇中、ジャンニが書く小説に由来。C
監督:フランチェスコ・ムンズィ 出演者:マルコ・レオナルディ(ルイジ)、ペピーノ・マッツォッタ(ロッコ)
イタリアの巨大犯罪組織「ンドランゲタ」が拠点とする小さな町を舞台に、抗争に巻き込まれた3兄弟の運命をスリリングに描いたクライムドラマ。南イタリア、カリブリア州の田舎町で生まれ育った3兄弟。三男ルイジはドラッグのディーラーとして成功を収め、次男ロッコはその利益を元手に事業を展開していた。長男ルチャーノだけは争いを嫌い、ヤギを育てて平穏な生活を送っていたが、息子のレオが敵対するファミリーを軽い気持ちで威嚇してしまったことから、彼らは血を血で洗う抗争に巻き込まれていく。『ゴッドファーザー』を筆頭にマフィアを描いた映画は多いが、物語の悲劇的な結末は印象深いものでした。「イタリア映画祭2015」では「黒い魂」のタイトルで上映されました。T
監督ステファノ・バンツィーナ 音楽ステルヴィオ・チプリアーニ 出演エンリコ・マリア・サレルノ シリル・キューサック マリオ・アドルフ マリアンジェラ・メラート
元警察官たちで組織され、ファシスト的思想をもつ“黒い警察”と呼ばれる暗黒組織に挑む一警部の戦いを描く。“黒い警察”と名づけられた集団は連続殺人を行なった。売春婦、ホモ、大学の過激派委員長と、続けさまに、恐怖と苦悶を残して扼殺され、あるいはチェーンや木材による全身殴打の扼殺というむごたらしさであった。この組織の正体は誰か?警部ベルトニ(E・M・サレルノ)は以前警察内部に関連していた人間たちに違いないと考え恋人である新聞記者サンドラ(M・メラート)に、死刑復活論に賛同し、強硬に閣議に圧力をかけている人間たちのリスト作成を依頼した。警部は、かつて名署長といわれたストルフィ元署長(C・キューザック)を逮捕に向かったが反撃される。検事補役のマリオ・アドルフが頼もしい。警察関係者によるバイオレンス映画は米映画『ダーティ・ハリー』シリーズに繋がります。T
監督フランチェスコ・ロージ 音楽ピエロ・ピッチオーニ 出演ジャン・マリア・ヴォロンテ ピーター・ボールドウィン カンヌ映画祭グランプリ受賞。 ヴォロンテ(マカロニ・ウエスタンで悪役に徹した)は歴史上の人物の実像に迫り、その雰囲気を伝えることに抜群の才能を発揮した。1962年10月27日の夜、イタリア・ミラノ地方は豪雨に見舞われていた。ミラノ空港の管制官は、数分前に着陸を伝えてきた小型ジェット機の機影が、レーダー・スクリーンから消えたのを確認した。翌朝、ジェット機墜落現場は惨たんたる様相を呈していた。塔乗者はイタリア国営炭火水素公社(EMI)の総裁エンリコ・マッテイだった。マッテイ(G・M・ヴォロンテ)は、政界に大きな影響力をおよぼしていただけでなく、イタリア工業界の驚異的な発展をもたらした大実力者だった。それだけにマッテイ事故死のニュースは伊国内はもとより全世界に伝わった。マッテイの専用機に誰が何を仕かけたのか。いったい誰がマッテイを殺したのか、ソ連やアラブと結んだマッティに対する国際石油資本による巧妙な仕掛けがあったのか、その真相はここでは明確には示されないものの、公式発表と現場での矛盾があることを示したり、記者の目を通して懐疑的に描かれる。T
監督リドリー・スコット 音楽ハンス・ジマー 出演ラッセル・クロウ ホアキン・フェニックス リチャード・ハリス コニー・ニールセン オリヴァー・リード
古代ローマの荘厳さを再現、迫力ある戦闘シーンが魅力的な英雄の物語を臨場感豊かに描いた。ハリウッドでは古代ローマ時代劇は
数十年ぶり、ラッセル・クロウは18㌔減量して筋肉をつけ、剣闘士グラディエーターを演じた。西暦180年、皇帝マルクス・アウレリウス(R・ハリス)の後継皇帝コモドゥス(H・フェニックス)は皇帝殺害の罪をなすりつけて将軍マキシマスを追放、マキシマスは剣闘士として鍛錬をつみ復讐の機会を狙う。コモドゥスはすでに彼の妻子を殺していた。無敵の剣闘士役を演じた、ラッセル・クロウ、巨大コロシアムや剣闘シーンの迫力映像、ジマーの音楽、これを越える古代ローマ史劇は当分現れないでしょう。アカデミー賞:作品賞、主演男優賞、音響賞など5部門受賞 C
監督パオロ・ソレンティーノ 出演トニ・セルヴィッロ ジェップ・ガンバルデッラ
小説家ジェップ(トニセルヴィッロ)65歳は人生を振り返る、どれだけの価値があったのか・・彼は40年前に一発当てた小説で成功した、いわゆるセレブだ。
ローマの富裕層の一人として、明け方までのレセプションやパーティを渡り歩く日々を過ごしていたが、そんなある日、彼の元に忘れられない初恋の女性の訃報が届く。初恋の人が忘れられず独身貴族を貫いてきた彼は、彼女の訃報を接して、改めて人生を考える。
40を過ぎてもヌードダンサーをしているラモーナ(サブリナ・フェリッリ)や老修道女との出会いもあり、長い間筆を折っていた作家活動を再開しようと決意する・・
ローマの美しい情景と圧倒的な映像美は素晴らしいがストーリーは観客の世代によって随分ちがったものになるかもしれない。第86回アカデミー賞外国語映画賞受賞 T
監督ダニエーレ・ルケッティ 原作ドメニコ・スタルローネ著:小説《靴ひも》 出演アルバ・ロルヴァケル ルイージ・ロ・カーショ ラウラ・モランテ シルヴィオ・オルランド ジョヴァンナ・メッツォジョルノ
出演者の顔ぶれの凄い事!現代イタリア映画を代表する俳優さんが揃ってます。ロルヴァケルは精神を病みがちな役柄が多いけれどこの作品もまた、”あやうさ”をひめた妻役でした。第2のモニカ・ビッティになりそうです。軽快なフォークダンス:ジェンガから始まりますが見事な家族崩壊のドラマでした。1980年代のナポリ、夫アルドが妻ヴァンダに浮気の告白をするところからドラマは重く深く、妻の自殺未遂までいきますが、何とか家族の体裁は保たれる。しかし、娘と息子の4人家族は靴ひもがもつれたまま歩き続けるとそうなるように、歩行が怪しくなっていく、シルヴィオ・オルランド扮する老齢のアルドが雄たけびのように自らの人生を叫び悔恨に涙する、冷ややかに見つめるヴァンダ、二人の子供の痛快な反撃、ファッションと音楽が楽しめるブラックコメディの傑作です。成長した娘役のジョヴァンナ・メッツォジョルノはオシです(笑) イタリア映画祭2021では《靴ひも》のタイトルで上映されました。T
監督マーヴィン・ルロイ 原作シェンケヴィチ 出演ロバート・テイラー デボラ・カー ピーター・ユスティノフ レオ・ゲン 西暦64年のローマ帝国、暴君ネロの圧政のため、当時広がりつつあったキリスト教も迫害の対象となっていく。ローマ軍司令官マーカスは戦地から戻り、元奴隷の
リジアと恋に落ちる。狂乱の皇帝ネロを演じたP・ユスティノフが素晴らしい、多くの伝承から描いていたネロのイメージに見事当てはまる。監督は『哀愁』『若草物語』のマーヴィン・ルロイ、R・テイラーとD・カーという美男美女を迎えてのロマンスだけでなく、マーカスの叔父、元老院議員ペトロニウスと奴隷ユーニスとの愛、ネロと後宮女性アクティとの愛も盛り込まれる。闘技場でのキリスト教徒の処刑やローマの大火の場面など原作に忠実に描かれている。原作は”読みだしたら止まらない長編歴史小説、映画は時代絵巻として楽しみましょう。シェンケヴィチ、1895年の作品、祖国ポーランドが周辺国に分割され消滅した年です、これまではポーランド史の英雄伝を書いていた彼は、一転、舞台を古代ローマに移しました。マーカスがアッピア街道で戦車を走らせるシーンを見ると街道の起点にあるクオ・ヴァディス教会に行ってみたくなります。D
監督ピエトロ・ジェルミ 音楽カルロ・ルスティケリ 出演 ピエトロ・ジェルミ クラウディア・カルディナーレ ニーノ・カステルヌオーヴォ
ローマの古いアパートで窃盗事件が発生。警部(ジェルミ)が捜査に当たる。女中のアッスンタ(カルディナーレ)は隣室のバンドウッチ家の女中でもある。警部はアッスンタの婚約者のディオメデ(カステルヌオーヴォ)を取り調べたが自白は得られなかった。1週間後、バンドウッチ夫人(エレオノラ・ロッシ=ドラゴ)が惨殺された。捜査の結果、犯人はアッスンタの手引きで結婚の金を目当てに侵入したディオメデだったことが分かり、逮捕した。警部の取り調べの過程で庶民生活がリアルに描かれ、ルスティケリの音楽が刑事ドラマに哀感を漂わせた。T
監督マウロ・ボロニーニ 原作ビタリアーノ・ブラカティ 脚色ピエロ・パオロ・パゾリーニ 出演マルチェロ・マストロヤンニ クラウディア・カルディナーレ
シチリア、カターニアの町へ美貌で名高いアントニオがローマ遊学から戻った。彼は父の勧める娘バルバラと一目ぼれの上すぐ結婚する、しかし妻の体に触れようとはしなかった。破局がおとずれる。彼は本当に愛する女性には冒涜するように思えて手を触れることができなかった。バルバラは再婚、しかし女中が彼の子を宿していることを知った家族は大喜び。皆の祝いの声も彼にはうつろに聞こえた。なぜならバルバラだけを愛していたのだから。マストロヤンニとカルディナーレの共演は大変貴重で、重いドラマにもかかわらず、二人の演技に酔いしれてしまいます。T
監督ディーノ・リージ 製作カルロ・ポンティ 出演ソフィア・ローレン マルチェロ・マストロヤンニ
映画俳優のコンビと言えば、ジンジャー・ロジャーズとフレッド・アステア、スペンサー・トレイシーとキャサリーン・ヘプバーン・・相当クラシックですね。マストロヤンニとローレンのの関係は群を抜いています。今回は歌手役のローレンがカトリックの神父にひたむきな愛を捧げようとする。北イタリアのパドヴァやヴェネツィアを背景にヴァレリア(ローレン)のアタックが続く、とうとう神父のドン・マリオ(マストロヤンニ)も彼女の虜になり、教会上層部に結婚の許可を願い出るのだが・・・神父がローマで、二人のために探したアパートにやってきたヴァレリアはサン・ピエトロ寺院のドームを窓から眺め、結婚はあきらめるしかない、生まれてくる子は一人で育てるしかないのだ・・と涙があふれる。悲しみに満ちた名作『ひまわり』も
同年の作品、二人のレパートリーの広さは無限です。C
監督ダミアーノ・ダミアーニ 出演フランコ・ネロ マーチン・バルサム マリル・トーロ モスクワ国際映画祭グランプリ受賞 マフィアの大物ロムンノは政財界の要人に深く食い入り、これを意のままに操っていた。警察署長ボナビア(M・バルサム)は、親友をロムンノに惨殺された過去をもち、以来、復讐を誓ったボナビアは数回にわたりロムンノを逮捕したが、強力な組織をたのむロムンノは、いささかの傷手も負わなかった。以後、執念のかたまりとなってロムンノを追うボナビアは、新しく検事補赴任してきた正義感溢れるトレイニ(F・ネロ)の力を得て・・ロムンノを追い詰めていくが・・・マフィアと財界、警察との不適切な関係に切り込んだ力作であり、警察の腐敗を告発した社会派ドラマとして忘れがたい映画です。T
監督ジッロ・ポンテコルボ 音楽エンニオ・モリコーネ 出演マーロン・ブランド エバリスト・マルケス レナート・サルバトーリ
ジッロ・ポンテコルボは『アルジェの戦い』65(ヴェネツィア映画祭グランプリ)でフランスの植民地支配と戦うアルジェリア人の姿を描き、観客をその戦いに参加しているような感動と興奮にかり立てた。手りゅう弾に素手で立ち向かう場面、鳥肌が立ちました。寡作な映画監督ポンテコルボの信条は非人間的な権力支配に対するきびしい告発だ、待望の次回作がこの作品になった。19世紀、大英国は世界中に植民地を拡大、カリブ海に浮かぶポルトガル領ケマダを狙う。英国は冒険家・権謀家ウィリアム・ウォーカー卿を派遣、革命家を育てポルトガルに反乱を起こさせ、英領にする、しかし再びケマダに革命の火が燃え上がる、ウォーカーは自ら育てた革命家たちを弾圧しなければならなかった。「私はこの作品で自由のために戦う黒人奴隷の姿を通して、現代の問題を描いたつもりだ。」とポンテコルボは語った。南米コロンビアのカルタヘナでロケ、エキストラ1万9千人、ウォーカー卿(マーロン・ブランド)の相手役ホセ・ドロレスを演じたエバリスト・マルケスは現地コロンビアで監督が選んだ素人である。この2人の姿、終わりの迎え方は先進国と途上国を思わせる。C
監督ヴィットリオ・デ・シーカ 原作チェーザレ・G・ヴィオラ 音楽 レンツォ・ロッセリーニ 出演ルチアーノ・デ・アンブロジオ(子供プリコ) エミリオ・チゴーリ(父アンドレア) イザ・ポーラ(母ニーナ)
ネオレアリズモの先駆とされる名作 アンドレアとニーナは、ローマ郊外のアパートに中流家庭を営んでいた。二人にはプリコという男の子があり、一見幸福な生活を送っているように見うけられたが、ニーナにはロベルトという秘密の愛人がいた。ニーナはロベルトと密会を繰り返し、駆落ちまでしてしまう。プリコは幼いながらも母と父の絆になろうと懸命に立ち回る。プリコを残されて困ったアンドレアは、ニーナの姉や自分の母のところへ連れて行ったり努力するも行き詰まり、プリコを施設に入れ、残酷にも一人息子を残して命を絶つ。施設に会いに来た母ニーナに対してプリコは涙をこらえながら連れの乳母の方に身をゆだね、母が「プリコ」と呼びかけても彼は背を向けて立ち去る。愛人のもとに走り、父を自殺に追いやった母への抗議だった。両親に裏切られた幼児が深い苦しみを乗り越え、これからは一人で生きていく決意をする。映画のなかに登場する海水浴場アラッシオ(リグーリア州)の賑やかしい場面は映画制作が戦争中であることを忘れさせる。子役の演技を引き出すデ・シーカは正に神業の領域です。D
監督ジウリオ・クエスティ 出演ジャン・ルイ・トランティニヤン ジーナ・ロロブリジダ エバ・オーリン
ローマ郊外で巨大な養鶏場を経営する男が頭のあがらない妻に殺意を抱いて完全犯罪を狙うが意外な結末を迎える。マカロニウエスタン『情無用のジャンゴ』の
残酷描写が話題になったジウリオ・クエスティ監督が現代に時を変えて、さらにエスカレートしていく。養鶏場の名ばかりの経営者マルコ(トランティニヤン)は妻アンナ(ロロブリジダ)の姪ガブリ(エバ・オーリン)が同居するようになると、マルコは次第に初々しいガブリとの2人だけの生活を願うようになり、妻に殺意を抱く
養鶏場の研究室にある放射性物質、餌作り用の粉砕機などが犯罪の残虐性を高めた。本国イタリアでは意外な結末を見せるために最後の20分間の入場を禁止して上映された。往年の美女ロロブリジダと新進女優エバ・オーリンの共演が話題になりました。C
監督ジュゼッペ・デ・サンティス 出演マッシモ・ジロッティ アンドレア・ケッキ
ポー川下流、ラヴェンナに近いデルタ地帯を背景として農民と地主の対立を描く。第二次大戦直後ロマーニャ地方の協同経営農場に下付された数百万リラの政府援助金が途中でギャング団に強奪された。そのうえ新婚早々の女性が一人、人質として連れ去られた。彼女の新夫ミケーレ(マッシモ・ジロッティ)ら協同農場の農民たちの激しい追跡がはじまりギャング団は次第に追いこめられ、ついに沼沢地の隠れ家に逃げこんだ。・・・メロドラマに西部劇風の対決場面が加わり娯楽映画的要素を兼ね備えたネオレアリズム作品である。終戦直後に撮られただけに戦争の傷跡をいくつかのシーンで見ることができる。T
監督フランシス・フォード・コッポラ 原作マリオ・プーゾ 音楽ニーノ・ロータ 出演マーロン・ブランド ジェームズ・カーン アル・パチーノ
シチリアからニューヨークに移民してマフィアの首領ドンになったヴィトー・コルレオーネには3人の息子がいた。コルレオーネはパレルモ近郊に実在する小さな村。ゴッドファーザーは一族の子供たちの名付け親。ニューヨークにシマを持つ五大ファミリーとの血の抗争、敵の罠におちて殺される長男ソニー、二代目ゴッドファーザーとなった三男マイケルは敵をせん滅して名をあげていく。マフィアの抗争と父と子の肉親愛が交錯する。残酷な場面とは逆に甘味なニーノ・ロータの主題曲はエバーグリーンになり、アカデミー作品賞、主演男優賞(マーロン・ブランド受賞拒否)に輝いた。この映画のヒットで32歳のコッポラが興行成績が落ち込んでいたパラマウント映画を救った、コッポラの演出力がアメリカ映画の存在を世界に示し、仲間のジョージ・ルーカスやスピルバーグに活躍の場が与えられた、と言われました。C
監督フランシス・フォード・コッポラ 音楽ニーノロータ 出演アル・パチーノ ロバート・デ・ニーロ ロバート・デュバル ダイアン・キートン アカデミー賞受賞(作品・監督・助演男優・脚色・美術・作曲)物語の時系列は2つある。1つはヴィトー(前作ではマーロン・ブランド)の若き日々を描いたもの、1900-30年代、両親と兄を地元シチリアのマフィアのボス(ドン・チッチオ)に殺されたヴィトー(デ・ニーロ)はアメリカへの移民となってニューヨークのリトルイタリーで成長する。皆から恐れられていた地元ギャングのファヌッチ(マリオ・アドルフ)を暗殺して住民から尊敬され、シチリアからのオリーブオイル輸入事業を行う会社を立ち上げる。もう1つは第1作で父ヴィトーの跡目を継いだマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)が父の盟友だったマイアミにいるマフィアの大物ロスとの闘いを描く。マイケルはこの抗争に勝利するが妻との離婚、兄フレドの裏切りなどで家族の大半を失う。時代背景は50年代後半。若き日のヴィトーを颯爽と演じたデ・ニーロ、マイケルの相談役の弁護士を演じたロバート・デュバルの出世作になりました。C
監督フランシス・フォード・コッポラ 音楽カーマイン・コッポラ 出演 アル・パチーノ アンディ・ガルシア ダイアン・キートン タリア・シャイア ファミリーのドンを継承したマイケル(アル・パチーノ)はバチカン銀行と手を組むことで合法的な仕事にうつろうとするが、亡くなった兄ソニーの息子である甥のヴィンセント(アンディ・ガルシア)の登場によって縄張り争いが再燃。マイケルは血気にはやるヴィンセントを諫めながら後継者にする。マイケルは兄を殺した罪悪感もあって孤独感は増すばかり。別れた妻ケイ(ダイアン・キートン)の説得もあって息子アンソニーがオペラ歌手になることを認めるが娘(ソフィア・コッポラ)がヴィンセントと付き合うことは拒否する。オペラ劇場でのクライマックスはシチリア舞台の作品カヴァレリア・ルスティカーナとの相乗効果で重厚なものになりました。ヘリによる銃撃の場面、あまりに悲劇的なラストなどに賛否ありましたが、イタリア映画ファンには懐かしいラフ・ヴァローネが教皇役、米映画の名脇役イーライ・ウォラックがシチリアの首領役で出ていて、私マルコは大いに楽しめました。C
監督マルコ・クロイツパイントナー 原作フェルディナント・フォン・シーラッハ 音楽ベン・ルーカス・ボイセン 出演エリヤス・エンバレク アレクサンドラ・マリア・ララ フランコ・ネロ 映画の冒頭、初老の男がベルリンの豪華ホテルにやってきて、スイートルームに宿泊中の富豪らしき男をいきなり射殺する。エレベーターでフロントに降りた男は無言のまま逮捕され、弁護士にも口を閉ざしたまま。往年のマカロニ西部劇スター、フランコ・ネロが初老の男コリーニを演じた。歳のいったイタリア人が高齢のドイツ人富豪にたいしてどのような遺恨があったのか、新米弁護士ライネンは国選弁護人として被害者遺族側の辣腕弁護士と法廷で闘う。そこで明かされる事件の背景はナチス時代、イタリアの寒村であった悲劇にあった、ドイツが抱える歴史的な痛み、ラストで一人の女性が「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」は原作者シーラッハ(祖父はナチ党全国青少年最高指導者だった)の思いかもしれない。T
監督マッテオ・ガローネ 原作ロベルト・サビアーノ:ノンフィクション「死都ゴモラ」 出演トニ・セルヴィッロ ジャンフェリーチェ・インパラート マリア・ナツィオナーレ
シチリアの「マフィア」とナポリの「カモッラ」はイタリアを代表する犯罪組織だ。この映画は組織への潜入取材で生まれたノンフィクションを基に、犯罪絡みのビジネスや抗争にかかわる人々をリアルにつづっていく。強盗や窃盗を繰り返すうちに組織に狙われ殺害される二人の若者、親が経営する雑貨店の手伝いをしていた少年が組織の一員となっていく。産業廃棄物を違法に処分する会社で働く青年、一流の仕立て屋ながら、中国人が経営する縫製工場に身売りする男等、カモッラの一員及び周囲の人々の危険を孕んだ日常を描き、彼らが暮らす巨大な団地がカモッラの牙城として不気味に登場する。観客はカモッラの深い闇とその巨大な影響力に衝撃を受ける。T